旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

喫茶去

皆様こんにちは!光彬です!
朝晩の冷え込みが強くなって参りました。
いかがお過ごしでしょうか?
暖かいものがより一層美味しく感じる季節ですね♪

暖かいものは、身体に入ってくると
心まで満たされて、どこかじんわり
満足感、安心感などが湧いてきませんか?
寒い所から部屋に入り、暖かいお茶なんか出てきて
ズーっとすすると、ホットしますね*

仏教には『喫茶去(きっさこ)』という言葉があります。
簡単に言うと、お茶でもお召し上がりください
ということです。

以前うちのお寺に石材屋さんが来ました。
いつも色々なことをお願いしている、お互いに気の知れた間柄です。その石材屋さんは、少しお年を召した社長とその息子さん、そして何名かの職人社員さんで営んでいました。面倒事も二つ返事でOKしてくれる、とても頼れる石材屋さんです。
今回もお願い事がありお寺に来てもらって話をしていました。話を進めていると、社長さんと息子さんの意見が少し合わなかったようで言い争いが始まりました。
細かいことではありましたが、二人にとっては職人仕事をする上で大切なことです。
年が一回りも二回りも違う二人に、私はなかなか仲裁に入ることも出来ませんでした。そんな私をよそに祖母がお茶をもってやって来ました。私は、え?!今?!とすら思いましたが、祖母は「まぁお茶でも召し上がってから考えたら」と笑顔でお茶を勧めました。
祖母は亡くなった先代の妻で、私よりも深い仲だったので、それでなのか、二人は少しばつが悪そうながらも
湯呑みの中のお茶を飲みました。

少しすると、社長さんが、
これからのことに関わるし今から若いやつに託していかなきゃかな。と、折れたようでした。
すると息子さんも落ち着いた社長さんを見て自分も落ち着いたのか、お寺さんと話し合いながら上手く決めていこう。と、二人ともさき程の言い争いが嘘のように
穏やかなものになりました。

喫茶去は、中国唐代の趙州禅師という方のお話からきています。この方は、初めてそのお寺を訪ねてきた人にも、以前来たことがある人にも、どんな方にもまずは
お茶をひとつ召し上がってと勧めたそうです。
一見、お客にはお茶だしをするなんて当然でしょ?と
思うかも知れません。しかし、たとえ粗末なお椀であっても、高級なお菓子ひと欠片が無くても、
精一杯のもてなしと丁寧な心で淹れたお茶には
相手を安堵させ心を打ち解けさせ素直な姿を
現してくれる優しい力があります。

普段から仕事、仕事で飛び回っている石材屋さんを労う気持ちをもって出された一椀は二人の張り詰めた心の緊張を少し緩めたのでしょう。

コロナウイルス、政治問題、犯罪、環境問題、家庭問題、、、数えればキリがないほど、
私たちの心を掻き乱す話題が後を絶ちません。
時短や効率、損得勘定が第一に考えられホッと一息何かを考える時間もないくらい忙しない現代です。そんな私たちの緊張の糸を少し和らげてくれるものは何か。

私は祖母から教えてもらいました。

この記事を読んでくださった方がいましたら、
是非、簡単で結構です。
暖かいもの何か飲んで15分でも良いので
ゆっくりしていただけたらと願います*

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