旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

名前も知らない友人

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みなさん、こんにちは。向月です。

令和元年初日ですね。「平成最後の○○」というイベントが多くありましたが、私はなんだか年越しみたいだなと思っていました。それで、昨夜の夕食はお蕎麦にしました。

 

さて、今回は中国で出会った家族の話です。

5年前、駒澤大学の先生方と中国の禅宗寺院を巡る旅に同行させていただいたことがあります。日程は10日間。湖南省湖北省(ちょっとだけ江西省)の禅宗寺院をバスでまわるものでした。

思いのほか過酷でしたね。乗り心地の良いとは言えないバス、長距離移動に夏の暑さと道路状況の悪さ、山奥の寺院では約4㎞を徒歩で登山。

 

この旅の中で立ち寄った湖南省のお寺に、欽山寺と言うところがありました。

山奥に突然現れる大きなお寺です。

赤い壁に囲まれた伽藍に、目の前には大きな方丈池。これぞ中国の名古刹という雰囲気のお寺です。

そのお寺を守る方々が暮らす寮のようなアパートがすぐ隣にあります。

一般の観光客のように風景やお寺仏様などをデジカメで撮っていましたが、お寺を守る家族と目が合いました。デジカメではなくポラロイドのカメラでその家族の写真を撮らせていただきました。私もくわわり一緒に記念写真です。

その写真をその家族に差し上げると、とても喜んでくれました。

 

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そこの旦那さんが私の手を引いて、お寺の裏に連れて行ってくれました。

中国語を話せないので何を言っていたのか分からないのですが、古い井戸や出土した食器を見せてくれます。この旅に参加していた中国出身の先生が通訳してくれました。

 

「これは1000年前からある井戸で、この食器はそこから出土したものだ。」

 

それに感心して見入っていると、さらに山奥に案内されます。そこには何かの畑が広がっていました。

 

「ここは、自慢の茶畑だ。私の家系は代々、ここでお茶お作り、それを売って欽山寺を守ってきた。観光に来る方は、みんな建物を撮る。でもそれを守っている私たちを撮ってくれたのは君が初めてだ。とても嬉しい。写真は宝物にするよ。」

 

帰り際には

「君はもう私の友達だ、いつでも遊びに来てくれ」

そう言って、自慢のお茶をくれました。

 

 

広い大地の上に人間が勝手に引いた国境がある。でも、人間同士にはそんなモノはなくて、言葉が分からなくてもわかり合えることが沢山有ると感じた旅でした。

彼と私は、境界線のない真っ平らな関係になれたと感じました。

この世界は、境目のない一つの世界なんだと。名前も知らない友人が、私に教えてくれた事でした。

 

 

また別の旅では「物理と仏教について」話すことがあったのですが、それはまた今度。