旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

而今に学ぶ。6

 こんにちは。俊哲です。而今に学ぶ。第6回はインドを旅した時のことです。

 

 仏教では四大聖地と呼ばれる場所があります。お釈迦様がお生まれになられたカビラ国〔ルンビニ〕、お悟りになられたマガダ国〔ブッダガヤ〕、初めて説法をしたヴァラナシ〔サールナート〕、そしてお亡くなりになられた、入滅されたクシナガラという場所です。それらはルンビニ以外はインド国内にあり、またインド北東部にはお釈迦様が遊行された多くの仏跡があります。12月から3月までは気候が安定することもあり、世界中からたくさんの仏教徒が巡礼に訪れます。

 

 私は1月から2月にかけて訪印し、特にブッダガヤに滞在しておりました。ブッダガヤ滞在中は、友人僧のいるミャンマーの僧院と、日本人僧侶が住するお寺でお世話になっておりました。この日本人僧侶がおられるお寺というのは仏心寺といい、宿坊もあることから、私が滞在中は各国の巡礼者や仏教を学ぶ異教徒の方、日本人バックパッカーなど様々な方が泊まられておりました。

 

 毎朝仏心寺では朝の勤行があり、自由参加ながら宿泊者も一緒にお勤めをします。ある日、その勤行を終えインドと日本を行き来して10年になる仏心寺の住職さんがインドを旅してきた若者に問いました。「旅の間、盗まれたり騙されたりしませんでしたか?」と。すると、旅人たちは騙されそうになったことや、危険な思いをしたことを語り始めます。それを一通り聞き終えると、住職さんは「それがインドです。」と一言返しました。

 

それがインド

 

 戒律という仏教徒として守るべきルールの中で、やってはいけないことの最初に説かれていることに、『殺してはいけない。盗みをしてはいけない。夫婦以外の者と肉体関係を持ってはいけない。嘘を言ってはいけない。お酒を飲んではいけない。』といった五つの戒めがあります。お酒は飲んでしまうかもしれませんが、お酒を飲みすぎることはいけないことだと言えば理解いただけると思います。でも、この五つの戒めは”当たり前“の事だと感じられるのではないでしょうか。でも、この当たり前と思うようなことをわざわざ仏教では戒めとして説いています。それは、インドという地においてそれが全てではなくとも、戒めとして説く必要があったということです。

 

 世界中、多くの宗教でこうしたことはいけないことだと戒められています。日本も長く仏教国と呼ばれ、仏教の教えが私たちの生活に密接に関係しています。

外国を旅すれば、価値観の違いに出会うことは多く、それらと出会うことが楽しみであり、また気をつけることの一つでもあります。

いわゆる仏教国と呼ばれる国が、旅人達から旅をしやすいと言われるのは、こういった”当たり前”の共有があることも一つの理由かもしれませんね。

 

 

 今回お世話になったブッダガヤ・仏心寺さんにもご協力いただき、来年も訪印を予定しております。ご興味がありましたら一緒に仏教が始まった場所へ行きませんか?

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ブッダガヤ・大菩提寺菩提樹