旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

「相互依存」の心地よさ

初めまして、向月と申します。

今回は「相互依存の心地よさ」を感じた話をさせていただきます。

相互依存と聞くとあまり良いイメージを持たない方もいるかもしれませんね。

しかし、身近な相互依存で心地よいと思える経験をしましたので、その時のお話しです。

 

私は一人旅が好きです。20数年前、よく行っていたのが、沖縄です。

沖縄といえば現在は観光アイランドとして有名ですが、当時はまだ人も少なく、静かな島も残っていました。

私が当時よく行っていたのは、八重山諸島。特に竹富島、黒島といった小さな島でした。

 

竹富島に行ったとき、民宿のオジーから三線(沖縄の三味線)を教えてもらいました。

1週間、宿泊したのですが、その間に3曲ほど弾けるようになりました。

三線の音色や沖縄の雰囲気に完全にハマってしまいました。

 

東京に戻ってきて、早速三線を買い、毎日練習していました。

あるとき、公園で弾いていると、おばあさんが立ち止まって聴いてくれました。

そのおばあさんは、沖縄に近い鹿児島の離島出身の方で、三線の音色が懐かしいと言っていました。数分お話しをし、おばあさんは帰っていきました。しばらく練習していると、さっきのおばあさんが戻ってきたのです。手にはパンとお茶を持っていました。

「お昼まだだったら、どうぞ。癒やされたので、そのお礼よ。」

そう言って、パンとお茶を渡してきました。

私はそのおばあさんの好意を大変うれしく思いました。

 

当時、私は無職でした。「自分には何もやりたいことがない。できることがない。」そんな思いを抱えて過ごしていました。

そんな時にこのおばあさんと出会ったのです。おばあさんが私の三線に「癒やされた」と言ってくれたとき「何もなくても何かを人に与えることができるんだ」と感じました。

 

 

人は一人では生きていけず、常に誰かと何かと関わり合って生きています。何にも依存せず自分一人で生きることはできません。みんな相互依存の中で生きているのです。

このおばあさんとの関わりは「三線で癒やされる」と「パンとお茶をいただく」といったものでしたが、お互い話をする中で打ち解け合い、気分が良くなることができました。お金やモノのやりとりではなく、心のやりとり。

Give & Takeを超えた“お互い様”で支え合う相互依存の心地よさを感じた話でした。

数年後、旅先で「ありがたい」と感じることに出会うのですが、その話はまた今度。