旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

新年の始めに初めまして。

こんにちは。今回より「旅する禅僧」ブログに投稿させて頂くことになりました、谷俊宏(たにしゅんこう)と申します。

 

北海道札幌市にて数年前に師寮寺の分院を建立し、主に市内を中心に布教活動をさせて頂いております

 

北国の田舎者が「旅する禅僧」ブログの新年一発目の投稿を担わせて頂くこと、大変遺憾ではございますが、開き直って書かせて頂きます。どうぞお付き合い下さい。

 

「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいる温かさ」

 

こちらの歌は、歌人俵万智さんの歌集『サラダ記念日』の中の一首です。実際に小学校、中学校、高校で授業時間に用いる教科書のどこかで、皆さまも目にしたことがおありかと思います。私の大好きな歌の一つです。

特に今の季節にぴったりな、とても心温まる良い歌ですよね。

 

数年前から続く新型感染症の流行や、異常気象による自然災害などの社会不安により、世の中は多くの悲しみにあふれています。

特に身近な所では、この感染症流行に伴う人間関係の希薄化が、差別や格差といった問題に現れている様に思えます。この未曾有の危機の中で私達に求められることとは一体何なのでしょうか。

 

曹洞宗の教えの中に同事という言葉があります。

その教えを修証義というお経の中では”同事というは不違なり”【同事というのは違わないこと】と示しております。

常に相手の立場になり、同じ気持ちで共に喜び、悲しみ、寄り添い合って生きていくことが肝心だと表しています。

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実際に、この「同事」の教えのように、自身の気持ちを理解してくれる存在が傍にいることは、とても心強く感じられ、大いに安らかな心持ちになれることでしょう。

 

冒頭で取り上げた俵万智さんの歌は、人と人との繋がりの温かさ・尊さを、更にはこの「同事」という言葉の意味を、より親しみやすく表現している歌ではないかなと私は思います。

 

先に申し上げた世の中の状況を心細く感じ、不安定な気持ちで日々を過ごされている方は一際多い事でしょう。そんな現状においてこそ、この俵万智さんの歌のように他者に寄り添う心、即ち「同時」の智慧をもって人々が手を取り合い、思いやりをもって過ごしていくことが、今を生きる私達にとっては特に重要になるのではないでしょうか。

 

まだまだ全国的にも寒さが続く時節ではありますが、俵万智さんの歌のような、人と人との繋がりの中に生まれる小さな幸せが、皆様の日々の生活の中で少しでも増えますようにお祈り申し上げ、私の拙話を終わりにしたいと思います。