旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

サクラが教えてくれること

 みなさんこんにちは尚真です。最近、暖かな日が続いており、朝の冷え込みもすっかり落ち着きました。もう私たちの住む地域ではコロナウィルスよりも、花粉の方が猛威を振るっております。

 

 一都三県に発出されていた緊急事態宣言は解除されましたが、新規感染者数は依然増加傾向にあり、まだまだ油断は禁物です。春らしくなってお出かけ日和な陽気ですが、外出の際は引き続き感染対策を行って行きたいと思っています。

 

 さて昨日までお彼岸でした。お彼岸には多くの檀家さんがご先祖様のお墓参りに訪れます。そんな私どものお寺の境内には樹齢百二十年にもなる大きなシダレザクラがあります。エドヒガンザクラと言う種類で綺麗なピンク色の花が特徴です。

 

 樹齢百二十年と言うと、一般的なソメイヨシノの樹齢が六十年と言われている中では、非常に長生きに感じます。しかしエドヒガンザクラはソメイヨシノに比べて寿命が長く、樹齢千年以上になり国の天然記念物に指定されているような木もあるようです。

 

 エドヒガンザクラの開花時期はソメイヨシノに比べて少し早く、例年は4月の上旬頃に見頃を迎えます。暖かい日が続いた今年は、珍しい事にお彼岸中にサクラが咲いてしまい、お参りに来た檀家さんは皆さんとても喜んでいました。

 

 

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ちょうど見ごろを迎えています

 

 そんなサクラの木は長年、私の父である住職と、樹木医と言う「樹木のお医者さん」の資格を持つ植木屋さんで大切に守ってきました。サクラの木と一緒に、住職と樹木医さんは年を重ねて来と言っても過言では無く、特に住職はこのサクラの木を大切にしていました。

 

 最近になってサクラの木はだいぶ弱ってきてしまいました。根っこを腐らせてしまう病原菌が根っこに入り込んでしまったのが原因です。樹木は必要な水分を、土の中に張り巡らせた根っこから吸収しています。根っこが腐った事で吸収できる水分の量が減ってしまい、二、三年の間に半分程の枝が枯れてしまいました。

 

 ちょうど樹木医さんが体調を崩した時期と、サクラの木が弱ってきたタイミングが重なって、二人は半ば諦めムードでした。住職も掘り起こされた腐った根っこを見てショックだったのか、どうせ枯れるなら維持管理を辞めてしまおうかと話していました。

 

 しかし当面の間、枯れ枝の撤去は引き続いて行う事になりました。直径20㎝にもなる太い枝も枯れてしまったので、落ちて人や建物に当たっては大変です。そうして昨冬と今冬の二回に分けて枯れ枝の撤去を行いました。全体の半分程の枝を撤去した後の姿は、あまりにも寂しい見た目になってしまいました。

 

 そんなサクラの木ですが、予想に反して今年は少ない枝ながら、枝いっぱいに花をつけて、とてもきれいに咲いてくれました。新しい小さな根っこもいっぱい生えてきて、すっかり元気を取り戻したようです。植物は、我々人間の想像よりもはるかに強い生命力を持っている事を改めて実感させられました。

 

 枯れ枝を思い切ってばっさり切った為に、必要な水分量が減った事がサクラの木が回復した原因のようです。新たに生えた根っこを見た住職と樹木医さんは、今まで諦めムードだったのがすっかりヤル気を取り戻しています。

 

 春は出会いと別れの季節です。一年の中で一つの区切りとか、節目とするにはちょうど良い時期だと思います。サクラの枯れ枝の様に、私たち人間にとっても良くない部分を取り除いて、気持ちを新たにして行くのはとても大切なことのように感じます。

 

 私は「旅する禅僧」の記事を書くことをきっかけに、旅の助けになればと英語の勉強を始めました。しかしコロナの影響もあって、ここ数ヵ月すっかりサボってしまっていました。そんな自分と別れを告げて、心機一転また春から少しずつ勉強を再開しようと密かに思っています。

 

 昨年度は、緊急事態宣言やコロナ禍による新たな生活様式という事で、慣れない毎日で様々な気苦労のある生活でした。そして今まで普通に過ごしていた日常が失われてしまった一年でした。私のように今まで続けてきた事が中断してしまっている方もいらっしゃると思います。

 

 姿形はだいぶ変わってしまいましたが、新たに復活してきれいな花を咲かせたサクラの木を朝課の後に眺めるのが最近の日課となっています。4月からの新年度から新生活が始まる方も多いと思います。気持ちを新たに、皆様にとってより良い一年になる事を心より願っております。