旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

秋は月

みなさんこんにちは尚真です。朝夕の冷え込みが増し、秋も深まってきました。気温が急激に下がる日も増えてきて、私も急いで秋冬物の服を引っ張り出して着ています。

 

つい先日、近所のスーパーに出かけた時の事です。どこのスーパーでも入ってすぐの目立つところに、季節の商品などのおすすめ商品が陳列されていると思いますが、そのスーパーはお月見のお団子がワゴンいっぱいに並べられていました。

 

秋と言えばお月見だよな~と思いながら何気なく眺めていたのですが、良く考えてみれば、先月ごろ中秋の名月だなんてニュースで言っていたのを思い出しました。

 

掲げてあるのぼりを見ると「十三夜」と書いてあります。確か、私が知っているお月見は「十五夜」のハズ。いつの間にか「十三夜」なるものが出来たのかと思い少し調べてみました。

 

十五夜」は旧暦の8月15日を指すそうです。昔は7~9月を秋としていたので、8月15日がそのちょうど真ん中に当たることから中秋の名月と呼ばれます。今年は9月10日でした。

 

ちなみに、「十五夜」は中国の「中秋節」が起源となっているそうです。中国では、家族の円満を願い月に見立てた平べったくて丸いお菓子「月餅(げっぺい)」を食べます。日本のお団子はまん丸ですから面白い違いですね。

 

それに対して「十三夜」は日本古来のお月見で起源は平安時代まで遡ります。旧暦の9月13日にあたり、今年はスーパーに出かけた10月8日がちょうど「十三夜」でした。

 

なぜこの秋にお月見のイベントが二つも集中しているのでしょうか。それは秋は気温や湿度が下がり、空気が綺麗に澄んでいるためなのだとか。また「十五夜」ではその年の豊作を祈り、「十三夜」は収穫後の豊作を感謝する意味合いも込められていたようです。

 

もともとの由来の違いはあるにせよ、「十五夜」と「十三夜」はセットでお月見をすると良いとのことです。「十三夜」を知らなかった私は、片方のお月見しかして来なかった訳ですが(片見月と言うそうです)、豊作のお願いだけして、その後で感謝をしないというのは、少し虫がいい話のような気がします。

 

皆さんは普段の生活の中で、空を見上げてみる機会はありますか。日々何かと忙しかったり、悩み事を抱えていたりするとそんな余裕が無いという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

真っ暗な空に煌々と月が輝くような月夜は、何だか心が空っぽになるような感覚になります。満月を見ると狼や大猿に変身してしまうように、月夜には昼間の空には無い、何か特別な魅力があるような気がします。

 

また私の住む地域はあまり街灯がない道も多いため、月が出ていない夜はあたりは真っ暗です。そんな夜は、普段月が闇夜を照らしてくれているありがたみに気付くことが出来ます。

 

私も最近忙しく、ゆっくりする時間を取れないでいたところだったので、先日の十三夜の月を見て少し心が軽くなった気がしました。

 

秋の夜長と言うように秋は夜の時間がどんどん長くなってきます。ぜひ皆さんもゆっくりと夜空を見上げて、秋の月を堪能してみて下さい。

 

道元禅師は「春は花 夏ホトトギス 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」という歌を詠まれています。道元禅師も修行に励まれる合間に、秋の月を眺めていたことでしょう。

 

 

十三夜の月