旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

而今に学ぶ。26

 こんにちは、俊哲です。暑かった夏がまだ昨日のように感じられますが、お彼岸も終わりすっかり秋本番となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

 世界が未曾有のコロナ禍となってからのこの3年間。読者の皆さまも、3年という歳を重ね、社会の変化に加え自身の加齢という変化を経て、価値観や時間の使い方にも大きな変化があったのではないでしょうか。

 私自身もコロナ禍で海外への渡航機会を失い、同時にお寺で過ごす時間がとても増えました。それはそれでやりたかったことを始める機会ともなり、その一つで野菜作りや植物の世話を始めました。

 

 特に以前より興味があったホーリーバジルの栽培を始め、この3年間で収穫の楽しみや苦労を味あわせてもらっております。最近では花や葉を乾燥させ、お茶にして身近な方へお渡しすることができ、ありがたいことにお渡しした方から感謝の言葉をいただき、2度、3度と喜びを味あわせてもらっております。

 

このホーリーバジルはハーブの一種でとても強い香りを放ちます。それゆえにこの葉を食べる虫も限られ、シソ科のハーブを好むベニフキノメイガの幼虫が目立ちます。この幼虫は、手で触っても毒がないことから、薬品や殺虫剤を用いず、見つけては手で取り除く作業をシーズン中はずっと繰り返します。

 

 春先からハーブ畑に通い手入れをしていると、ハーブのみならず、畑周囲の雑草や虫たちも季節によって様々な姿を見せてくれます。

 

愛らしいてんとう虫の姿も

 

 

 涼しい日が増えてきた9月末から10月は、音色の美しい秋の虫も当然増えるのですが、夏の頃には畑で姿を見なかったスズメバチの姿をよく目にします。

 

 涼しくなったことで餌となるものが減ったスズメバチは先ほど述べた、蛾の幼虫や虫達を捕食するため畑に近づいてきます。この時期のスズメバチはそうした飢えによって殺気立ち、攻撃性を増していることから非常に危険と言われます。

 実際この時期に畑で見るスズメバチは、夏には捕食しなかった蛾の幼虫を狙うほどですから、殺気立っているのはその場に居合わせると非常によくわかります。

 

 

 

 私の祖父はスズメバチに刺され、アナフィラキシーショックでこの世を去りました。

そうしたこともあり、幼い頃からスズメバチの危険性を両親から口酸っぱく言われて私は育ちましたので、時期に関わらずスズメバチのことを人一倍気にしております。

 

 つい先日も畑からお寺に戻る道で、殺気立った大きなスズメバチとすれ違いました。

正面から飛んできたスズメバチに、思わず急ぎ身を低くして、頭上をビューっと飛びゆくスズメバチを見送りました。

次の瞬間には

「あっぶねー。」

と思う自分が居りました。

 

その正面から飛んできたスズメバチや畑の周りで狩りをしているスズメバチは、私の中で「死」を意味していることに気がつきました。

飛んできた鉄砲玉と同じようなもので、当たらなくてよかった、死ななくてよかったと安堵しておりました。

 

 

実際は、ただ懸命に生きているスズメバチの姿がそこにあるだけなのですが。

 

「あっぶねー。」と思っている自分とも距離を置き、冷静になると、

必死に生きようとするスズメバチの命と、祖父の命がたまたま交差をしたということがそこにあるだけだとわかります。

そして私も、先ほどすれ違った正面から飛んできた「懸命に生きる命」「死」の象徴が、私の命と交差するのが今じゃなくてよかったと安堵しているのだと気がつきます。

 

 

 実際は、いつどこでこの命が終わりを迎えるのか分かりません。

もしかしたら次の瞬間には…。

そんなことを頭ではわかっていても、その「死」への恐怖が可視化され、自身の目の前に現れた時、私は生きていることに安堵し、生きていたいと感じておりました。

 

スズメバチが見せた姿も、私が抱いた安堵も、どちらも懸命に生きる命に違わないものだったでしょう。

 

而今に学ばせていただきました。

ホーリーバジルの花。和名は神目箒。

天日干しをするホーリーバジル。インドの伝統医学アーユルヴェーダには「不老不死の霊薬」とも

 

 

#曹洞宗 #農業 #アーユルヴェーダ #ホーリーバジル #ハーブティー

#皆さん #スズメバチ には #気をつけて