皆様、初めまして。
隆宗と申します。
私は臨済宗の僧侶ですが、俊哲師のご紹介でこちらでお話しさせて 頂くことになりました。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
まだ出国した時分は新型コロナウイルスのことも日本ではそれほど 騒がれておりませんでした。
そんな私がこの度、恐れ多くも旅する禅僧にてお話しさせて頂く機 会を賜わりました。
そこで、この旅のときのことを少しばかりお話しさせて頂きます。
皆様はインドと聞いてどんなイメージが思い浮かびますか。
カレー。
牛。
汚い。
怖い。
お腹を壊す。
人がたくさんいる。
もしこのイメージが思い浮かびましたらそれはすべて正解だと思い ます。
インドといえばカレー。
スパイシーな激辛のカレーがどこに行っても楽しめます。
辛いのはカレーに限ったことではなく、 インドの食べ物の多くは私にとっては激辛なものでした。
私は辛いものが大の苦手なので、 いつもなるべく辛くないものを探して食べていました。
また食事を注文するときには必ず辛くないかどうか確認したり、 辛くしないで欲しいとお願いしたりしていました。
ただ辛くしないで欲しいとお願いして作ってもらっても私にとって はまだまだ辛いものも多く、 インドでもっとも苦労したのは食事だったといっても過言ではあり ません。
ちゃんと辛いものが苦手な人向けに加減して料理を作ってくださる ところもあったので、 そういうところで食べたカレーはとっても美味しかったです。
インドに行くと車の多さに圧倒されます。
そして音が凄い。
たくさんの車によって出される音はそれはそれは大きなものです。
そんな中、音もなくひっそりとしているにも関わらず、 存在感がハンパないのが牛。
牛、牛、牛。
どの街でも当たり前のように牛が闊歩し、 道路に寝そべったりしていました。
牛が街中にいるということはつまり牛たちの排泄物も街中の至ると ころにおわすということです。
牛のための公衆便所はありません。
彼らはどこでもしたいときにしたい場所でします。
だから歩き回るときは足元にも十分に気を付けなくてはなりません 。
今でも覚えています。
踏んだときのあの感触と、ああああという悲しい気持ちを…。
足元で気を付けなくてはそれだけではありません。
道路の穴に溜まった濁った水や道に散乱したゴミなどもよくある光 景です。
さらには町中を流れる川から漂う凄まじい異臭。
汚くて臭い。
これもまたインドへ行くと思う正直な感想です。
インドへ行くという話をするとよく言われるのが、 インドは危ないんじゃないか、ということです。
これもまたその通りで、 確かに日本では考えられないような危険というものがインドにはあ ったりします。
インドへ行くのはこれが2回目で、 初めてのインドでは何度か怖い目に遭いました。
怖い目には遭いましたが、 それも後から思い返せば防ごうと思えば防げたことがほとんどでし た。
どのような危険が起こりうるのかということはある程度事前に調べ ることができますし、調べることで対策を練ることもできます。
知らなかったら怖いことでも知ることで怖くなくなることもありま す。
今回は2回目ということもあり、下調べも入念におこない、 1年くらいかけて準備をしました。
準備の中で今回のインドの旅で前回と最も異なっていた点がありま す。
それはスマートフォンの存在です。
前回行ったのは今から15年以上も前の話で、 当時はまだスマホという物がありませんでした。
地球の歩き方を握りしめてあてにならない地図で右往左往したり、 列車のチケットやホテルの予約なども行き当たりばったりでとても 大変でした。
乗るはずの列車が発車予定時刻になっても到着せず、 いつ来るかもわからないまま夜の駅でえんえんと待ち続けた思い出 もあります。
行きたい場所へのルートも危険そうな場所を迂回するルートも簡単 に見つけられました。
列車のチケットもアプリで予約ができて、 列車の到着予定時刻でさえアプリで確認できてしまい、 乗車チケットもeチケットなのでスマホの画面を見せるだけで済む という便利っぷり。
さらにはホテルの予約はもちろん、 市中の移動のタクシーやバイクタクシーでさえスマホのアプリを使 って乗降場所が簡単に指定できてしまいました。
恐ろしいほどの便利さでした。
便利になったということは、 怖いと感じることがその分減ったということでもあります。
これによってすべての危険がなくなったわけではありませんが、 多くのリスクを減らすことができたのでとても旅しやすくなりまし た。
ところがどっこい、そこに油断が生じていたのか、 はたまたしかたのないことだったのか。
いろいろ調べていても、気を付けていても、 高度な文明の利器をもってしても、防ぎたくても防げなかったこと もありました。
そう。
下痢です。
インドに来て迎えた3回目の朝から私のお腹の調子は突然おかしく なりだしました。
そしてその日の夜。
とうとう私のお腹は盛大にぶっ壊れました。
もともとお腹が弱い私なのですが、 あれほどの破壊はいまだかつて経験したことがないものでした。
一晩中続いたベッドとトイレの往復。
このとき感じた心細さもまたえも言われぬものでした。
それでも部屋の中にトイレもシャワーも付いていましたし、 シャワーはちゃんと24時間お湯が出ましたので、 最悪ではありませんでした。
またインドでお腹を壊したらどうすると良いかということもインタ ーネットで調べることができました。
すぐに目当ての薬を手に入れることができ、 幸いなことにこのときは3日ほどでお腹は治りました。
原因ははっきりとはわかりませんでしたがおそらくは緊張と疲れと 食事が合わなかったのだろうと思われました。
その後の旅では食べるものに関してはことさら気を付けるようにし ました。
それでもその後もたびたび壊れましたが…。
行ってみたことでようやくわかるということもありました。
それは、インドも場所と時期によっては実はとても寒い、 ということです。
インドは暑い国というイメージでした。
でもインドも寒いときは寒いのです。
特に朝晩と太陽が出ない日。
今回旅していた期間はずっと普通に寒かったです。
予想外の事態ではそのときにできうる対策を講じなくてはなりませ ん。
私はすぐに毛布を購入しました。
さらに途中でもう1枚買い足しました。
衣の上から毛布を巻きつけてお参りに行ってました。
列車を待つ朝方の駅のホームでは毛布にくるまってないと寒くて座 っていられませんでした。
ホテルでは置いてあった毛布以外に調達した毛布も使って寝ていま した。
寒さは危険です。
体調を悪くしたり腹痛の原因にもなりますし、 低体温症は命にさえ関わります。
インドの寒さは予想をはるかに超えていました。
行ってみて自分で実際に経験して初めて身に染みてわかったことで した。
ちょっと歩くだけでその強烈さに目眩を覚えるインド。
また行きたいです。
聖地の話はしておりませんが旅した話はできましたので、 この辺りで終わりにさせて頂きたいと思います。
少しと言いながら長くなってしまいました。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
旅に出るとそのつど新しい発見があります。
新しい発見はいつもとても感動します。
私はその感動が大好きで大好きでいつも旅に出ています。
自分のすべてを通して感じて体験した感動は私にとって最高のもの です。
もう少し状況が落ち着いてきたらきっとまた旅に出ようと思います 。
よろしかったらそちらも合わせてご覧ください。
最後の最後に、皆様のご多幸を心より祈念申し上げます。
ありがとうございました。
合掌。