旅する禅僧

より多くの方々に仏教をお伝えし、日常の仏教を表現していきます

好きの中の嫌い 嫌いの中の好き

みなさまこんにちは!
光彬です!
少しずつ涼しくなり秋の予感がして参りました*
私は金木犀の香りがとても好きなので
待ち遠しい気持ちです!

本日修行道場において転役(てんやく)という、
部署異動があり、約1年半お世話になった
調理場を出ることになりました!
今度はお寺の入り口で様々な受付をする、
受処(うけしょ)に配属されることになりました!
また気持ちを新たに頑張ります!

つい先日の話、
まだ調理場で寺内の食事を支度していた時のことです。

私は昔から偏食家で、とにかく気に入ったものはたくさん食べ、嫌いなもの、特に、食べてもいないのに匂いや見た目が気に入らないという理由ですら、食べたくない!と
頑なに拒んできました。
とくに、ここには多過ぎて書ききれませんが
野菜は大の苦手でした。
大学生の時にアルバイト先のファストフードの飲食店では
賄いがでたので、そこで色々食べれるようになりましたが、それでも食べたくないものはまだまだありました。

卒業後は修行に行き、そこでは私の食べたいものなど
個別では出てきません。その中の大勢の修行者と指導役はみんなで同じものを頂きます。初めて味わう空腹感からか、修行中には野菜嫌いなど無くなったのかと思うほど食べられるようになりました。それに、美味しいとすら感じていたのです。これには自分でも驚きました(笑)

美味しいものがたくさんあるんだと気が付かせて頂いた修行期間でしたが、その後、指導役として再び調理場で修行させて頂くことになりました。
2年目のついこの間の9月初頭、いつものように
寺内の食事を作っていました。その日は他見から
色々頂きものをしていて、何種類かの野菜が調理場に
集められていました。その中に、私があまり好きではない野菜、ズッキーニが見えました(*_*)
これは。。と思い、どんなメニューにするか
調べたりしましたが、気持ちは既に離れていました。
私は食べなくても良いから他の人が食べてくれるだろうとまで考え、簡単によくあるメニューにして提供しました。
思いの外美味しく出来たようで、みんな喜んでくれました。ですがここでピンチが訪れます。
見落としていた未使用のズッキーニがもう1つ
箱から出てきたのです。中途半端に余ってしまったので
どうしようかと思っていました。すると、1人の修行僧が
ちょっと作ってみたい物があるんですがよろしいですか?と使用許可をとってきたので、私はラッキーと思い
何でも良いから作ってみて良いですよ*と半分安心した気持ちで答えました。

何分かして、 出来上がった!と声がしました。
品物を見る気もありませんでしたが、どうでしょうか?と聞いてきたので一応確認しました。
修行僧全員の分は無いけれど、中ぐらいの丼に
8分目くらいに出来あがった料理がありました。
良かったら味見をお願いします!と言われましたが
乗り気ではありませんでした。ですが
不思議となんとも良い香りがしていたのです。

一欠片をさらに半分にして恐る恐る頂きました。
飲み込んでしまえと思いましたが、うっかり噛んでしまいました。するとどうでしょう、美味しかったのです。
平静を装い、美味しいねと、もう一欠片を食べてみましたがやはり美味しかったです。
私は今まで何を怖がってこれを見てきたのか、
一瞬にして分からなくなってしまいました。


曹洞宗 大本山永平寺を開かれた道元禅師様の書き示された教えに『典座教訓』という出典があります。
その中に
「比丘の口、竈の如し。(びくのくち、かまどのごとし)」という言葉が出て来ます。続きがありますが、
仏道修行者というのは、好き嫌いせずどんな食べ物でも同じように有り難く頂くのである。
続き→[この事をよく理解すべきだ。粗末な野菜が修行者の尊い身心を養い育むのだ。賎しいとかつまらないと思って支度してはいけない。仏同を説く修行者は、粗末なものを修行者が食べて力が湧くように工夫して作らなくてはいけない。]と。

私は食べてすらいないものを嫌いだからと遠ざけ、他の方が頑張って修行して頂くためにより美味しくしようとする努力も怠っていました。それはもはや仏道修行を怠っていることと同じです。お経を読む法要は好きだけれど、座禅は苦手だからしない、そんなことは言えません。ですがそう言っている事と同じなのです。

人は好きの中にも嫌いがあって、嫌いの中にも好きがある。誰しもがそうだ。嫌いな食べ物も調理法によっては食べられたり、嫌いな人がいてもその人の中に良いなと思えたりする部分があったりする。
宗教、また仏教において、その教えは生き方を豊かにしてくれる。修行も、嫌なことを少しでも楽しとか良いとか思えるよう工夫して臨めばそれは素晴らしいことに繋がる。あるご老僧からの言葉です。

調理場で怠慢になっていた私への最後の警告か、激励か。
これからまた一から色々なことを覚えていくわけですが、
嫌な仕事を進んでやり、得意な事に変えてより良い修行にしていこうと思います。f:id:tabisuruzensou:20200915225558j:plain