はじめまして、慧州と申します。様々な禅僧が旅先や日常の中で感じたことを綴っていくコラムということで、今回初めて寄稿することになりました。宜しくお願いいたします。
暑い8月も半分が過ぎ、お盆の時期を迎えています。もしかしたらこのコラムを見ている方でも帰省をされて、地元でお墓参りや懐かしい方々との再会を果たしているかもしれません。
先日、私の姉達も子供を連れて帰省しにやってきました。5人の甥っ子、姪っ子が集まったため、家の中はとても賑やかに。何日か宿泊したのですが、その間は自宅のお風呂ではなく近所の銭湯に行くのが我が家の恒例となっています。実は普段銭湯に行く機会が少ない子供達にとって、銭湯は楽しみなイベントでもあるのです。
銭湯といえば大きなお風呂ですが、もう一つ普段は入れないものがあります。それは水風呂です。子供にとって水風呂は一番気持ちがよいみたいで、どうしても水風呂に入るとはしゃいでしまいます。ついつい騒いでいると私や父に怒られてしまうのはご愛敬でしょうか。
お風呂に入った後の冷たい飲み物も楽しみの一つです。甥っ子は入る前から私にこう言いました。
「お風呂上がったらフルーツ牛乳飲むんだ!」
瓶に入った冷たい牛乳をゴクゴクと飲み干し、ついつい「ぷはー」と声に出す子供の姿は、まるで風呂上がりにビールを飲む大人のようです。今の学校給食では牛乳パックが多いそうで、当初は紙蓋の開け方も分からなかった子供達でしたが、今では手慣れたように開けています。
そんな楽しい銭湯ですが、何よりも魅力的なのは知らない人との交流です。先日ある方が子供達に銭湯の事を教えてくれました。
「ここにある岩は動物に見えるでしょ?わざとやっているんだよ」
山の壁画の脇に岩が置いてあるのですが、角度によっては動物に見えることを教えてくれたのです。すると子供達はたちまちにいろんな物を動物に見立て始めました。
「この岩はライオンに見えるね。でもなんで山の近くにライオンがいるの?」
私はその想像力に黙って笑ってしまいました。
大人が子供を育てると思われがちですが、実は大人である私たちも子供に育てられていると感じました。子供の感覚はどこか懐かしく、そして大切なものが隠されているような気がします。
最近は知らない人と話すことは物騒だと言われてしまいます。しかし、銭湯は大人子供関係なく楽しむことができ、知らない人も含めみんなで場所を共有できる場所です。そういった場所に連れて行ってあげることも大人の役目なのかもしれません。